フランツ・カフカ - 城

カフカの長編小説『城』。
昨年授賞したフランツ・カフカ賞の授賞式にて、村上春樹氏は「15歳の時にカフカの『城』を読んでショックを受けた」と語っていた。
これを聞いて読まずにはいられなかった。
予約していた本を受け取りに開館直後に図書館に行ったところ、新着コーナーに本作品
が置いてあった。
新装版が出ていたらしい。これはラッキー!速攻で借りてしまった。


内容はこんな感じ。
測量士である「K」が仕事を依頼されてとある村に行くが、手違いで仕事が無かったことを知る。
なんとか城に住んでいる依頼主の伯爵とコンタクトしようと試みるが、'門'は固く閉ざされていて近づくことすらできない・・・


読んでみた感想だが、風変わりな文体で、つかみ所がないというのがまず感じたこと。
この感覚はなんだろう。
そう、村上春樹氏の作品そのものなのだ。
間違いなく村上春樹氏の作品に影響を与えていることがうかがい知れる。


主人公「K」は城の役人に翻弄され、身分の違いというものを嫌と言うほど思い知らされる。一方で村の女性には不思議とモテまくる。
性格的には狡猾で人をおとしめるタイプ、いわゆる「卑劣漢」だ。
ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟」のミーチャを思い出した。


なんとなくつかみ所がないのだが、小さな閉ざされた村と城の情景がいまでもはっきりと思い出せる。
まるで自分の目で見てきたかのように。
雪深い村にひっそりと建つ宿屋。
外界と断絶されたかのように静まりかえった街並み。
手を伸ばせば届きそうなほど近くに建っているのに、決して足を踏み入れることのできない荘厳な「城」。
秘書が滞在する貴賓溢れる宿屋。


本作品は未完らしく、唐突に終わりを迎える。
結局「K」は村でどのような人生を歩んで行ったのかわからないが、それは読者の解釈と想像に委ねられているのだろう。


城