飯塚訓 - 墜落遺体―御巣鷹山の日航機123便

沈まぬ太陽」を読んで事故当時の現場の凄惨さを知り、もう少し日航機事故に関する書籍を読んでみたいと思い、本書を手に取った。


著者は高崎署刑事官として、実際に身元確認班長を務めた人物であり、事故現場のより緻密な状況が描かれており、改めて事故の悲惨さを思い知った。


遺体確認という大変な作業を徹夜で行うさなか、警察側が遺品をなくしてしまうという大失敗を犯してしまう。著者が代表者として遺族に謝る場面が描写されているのだが、電車の中であるにもかかわらず、涙がこみ上げてきた。
遺族からは当然のように激しく叱責される。が、その数分後に以下のような言葉が遺族から著者に投げかけられる・・・

「先ほどは失礼しました」
憮然として席を立ってから、五〜六分して、M・Iさんが戻ってきた。
「指はは見つからなくても、あなたは警察を辞めないでください。女房に『あれだけ誠意をもってやってくれている人を辞めさせたら、娘に叱られます。娘は喜びません。すぐにそういって来てください』といわれて来ました。私もつい興奮して失礼なことをいってしまいましたが、女房にいわれたとおりです」という。
M・Iさんご夫妻の温かく、思いやり深い心に触れて、私の体中は感動で熱くなった。新たな涙がこらえようもなく出てくる。

墜落遺体―御巣鷹山の日航機123便
飯塚 訓
講談社 (2001/04)
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