カズオ・イシグロ - 日の名残り

最近良く著者名を目にする機会があったのだが、話題の人かと思い読んでみることにした。
とりあえずAmazonで検索して一番上位だったこの作品を購入した。


主人公がこれから旅に出るという設定から始まる。
変わっているのは主人公が「執事」だということだ。
ちょっと前に「執事喫茶」という単語を良く耳にしたが、「執事」というものについては召使いぐらいにしか理解していなかった。
この作品を読む上で「執事」を理解していないと十分に作品を楽しめないと思い、Wikiで調べてみた。
ごく簡単に要約すると、イギリスにおけるいわゆる召使いをとりまとめる人間。
雇い人と極めて近い存在で、それなりに権限も与えられている。
自分は社長の秘書のようなものだと理解した。


この作品を素晴らしいものにしているのは、なんといっても土屋政雄氏の超訳であろう。
著者名から判断すると日本人なので、原文も日本語かと思っていたが、そうではないらしい。
主人公の品の良さが伝わってくるかのような言葉遣いが丁寧に表現されている。
なんのひっかかりも無く、自分の中に文章がすーっと吸い込まれていった。


最後のクライマックスでは主人公に感情移入してしまい、思わずこみ上げてくるものがあった。


久しぶりに肩の力を抜いて、落ち着ける作品を読むことが出来た。
そのあとに続く解説もなかなか良かった。


読んだあとに知ったことだが、本作品は映画化されているらしい。
自分の頭の中にはしっかりといろんな場面の情景が焼き付けられている。
部屋の中から庭を見下ろす場面や、ガス欠で佇むフォードや、夕方のオレンジ色・・・
自分にとっても一日の中で夕方は一番いい時間だ。


日の名残り