村上春樹訳 - グレート・ギャツビー
村上氏が満を持して訳したフィッツジェラルドの作品である。
野崎氏の訳は2回ほど過去に読んだことはあった。
そもそも本作品を読んだきっかけは、村上氏のノルウェイの森。
待望の村上氏の訳とあって、いやが上にも期待が高まった。
まず冒頭が素晴らしい。
僕がまだ年若く、心に傷を負いやすかったころ、父親がひとつ忠告を与えてくれた。その言葉について僕は、ことあるごとに考えををめぐらせてきた。
「誰かのことを批判したくなったときには、こう考えるようにするんだよ」と父は言った。「世間のすべての人が、お前のように恵まれた条件を与えられたわけではないのだと」
しかし正直言って、それ以降は目新しい発見もなく、少々期待外れであった。
明らかに流し読みしてもいい箇所もあった。
最後まで読み終わって、付録の「翻訳者として、小説家として---訳者あとがき---」を目にしたとき、この作品の真髄を味わうことができた。
そこには、氏の本作品に対する思いがあますことなく語られており、感銘した。
結論は、原文を読まないと本作品の本当のエッセンスは味わえないらしい。
それも英語がある程度わかるだけでは歯が立たないとのこと。
自分にはそこまでする根気も時間もないので、何度も村上氏の訳を繰り返し読みたい。
「翻訳というものには多かれ少なかれ『賞味期限』というものがある」というのは新たな気づきだった。
グレート・ギャツビー
posted with amazlet on 06.12.30